2023年の出生数が初めて80万人を割り込む見通しというニュースが駆け巡りました。
このまま少子化が進めば高齢者を支える労働人口が少なくなるため、税金を含む社会保障費の増大は避けられません。
日本の社会保障の状況を公のデータをもとに客観的に見ていきましょう。
OECD加盟国との比較も検証して、世界的な立ち位置も提示しているので参考にしてください。
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少子高齢化・人口減少が止まらない
現在の日本は、少子高齢化に伴う人口減少期に突入して久しいです。
近い将来、団塊の世代・団塊ジュニア世代が高齢化に突入します。そのため、人口の多い高齢世代を若い世代が支えなくてはなりません。
しかし、以下の表の通り、世代が若くなるほど少なくなっています。
2020年の年齢人口分布は以下の通りです。
人口が突出している年代は団塊世代(70~74才)・団塊ジュニア世代(45~49才)と呼ばれています。
続いて、2045年の年齢人口分布を見てみましょう。
2045年を見てみると、団塊ジュニア世代が後期高齢者へ突入します。また、長寿化により90代以上は500万人を超える推計がでています。
2020年と2045年の90代以上の人口を比較するために、以下の表にまとめました。
<90代以上の人口推移>
2020年 | 2045年 | |
---|---|---|
男性 | 593,179 | 1,553,307 |
女性 | 1,758,074 | 3,738,226 |
男女合計 | 2,351,263 | 5,291,532 |
90代以上の人口は約2.2倍にまで膨らみます…!冷静に考えて、90代以上の人口が500万人を超えるってすごいことですよね。
ただし、90代以上の割合は増えますが高齢者数の鈍化と64歳までの人口減少の加速により、高齢化率の伸びはそこまで大きくならないと考えられています。
高齢化率自体は鈍化するため、気休めに近いものの若い世代は少しホッとしますよね。
とはいえ、少子高齢化に伴い労働人口も減少するため、社会保障を含む税金の負担は重くなる可能性が高いです。
また、団塊ジュニアとはいわゆる就職氷河期世代と呼ばれる世代のため、経済的に厳しい人が多いと言われています。
つまり、若い世代は団塊世代を支えるだけでなく、経済的に厳しい団塊ジュニア世代を支えなくてはならない可能性があるのです。
出生数の低さ・少子化の現状と原因
労働人口の減少や社会保障負担の増加のすべての原因となる、少子化の現状と原因を把握しましょう。
日本の出生数・少子化で知っておきたいポイントは以下の2つです。
- 出生数は加速度的に減少
- 少子化の原因は未婚率の上昇
今の日本のヤバさがわかるはずです…。
出生数は加速度的に減少している
出生数は加速度的に減少しており、2022年の出生数は80万人を割る見込みです。
2015〜2020年の5年間の出生数推移の数値を表とグラフにまとめました。
西暦 | 出生数 |
---|---|
2015 | 100万6,000人 |
2016 | 97万7,000人 |
2017 | 94万6,000人 |
2018 | 91万8,000人 |
2019 | 86万5,000人 |
2020 | 84万1,000人 |
2021 | 81万1,000人 |
視覚的にわかりやすいよう、棒グラフで確認しましょう。
綺麗な右肩下がりですね。
令和2年版厚生労働白書によると将来推計人口における2040(令和22)年の出生数は約74万人と推計されています。
しかし、2016年に出生数100万人を割り込んでから3年で2019年に90万人を割っており、減少の勢いは加速しているため、2040年より前に74万人まで減少する可能性が高いです。
少子化の原因は未婚率の上昇
少子化の理由はさまざまですが、最大の原因は未婚率・晩婚率の上昇です。
男女別に 年齢(5歳ずつ)別未婚率の推移を見てみましょう。
特に団塊ジュニア世代は就職氷河期に見舞われたため、経済的に安定せず未婚率が高いと言われています。
実際のところ、既婚者の出生率は大きく減少していません。
完結出生児数は過去最低を更新したものの、横ばいで2人近くを維持してきました。
※完結出生時数とは結婚持続期間(結婚からの経過期間)15~19年夫婦の平均出生子どもの数のことです。
結婚した夫婦の多くは平均で2人の子どもをもうけており、既婚者だけで見るとそこまで少子化は加速していないことがわかります。
また、少子化の加速と言われているものの、近年の合計特殊出生率はアジア先進国よりも高い数値です。
夫婦がもうける子供の数や出生率自体は悪化していますが、急激な出生数の低下の直接的な原因とは言い難いです。
未婚率について見ていきましょう。以下の表を見ると50歳時点で未婚の割合は増加傾向です。
婚外子の少ない日本で未婚率の上昇は生涯無子率の増加につながると予想できます。
結婚すれば多くの夫婦が子どもをもうけているものの少子化が止まらない理由は、未婚化・晩婚化が影響していると言えるでしょう。
出生数が激減した理由は以下の2つの事象が重なったと考えられます。
- 未婚率・晩婚率の増加
- 出産可能な女性の減少
団塊ジュニア世代が出産可能な年齢を過ぎたため、どうしても出生数は少なくなってしまいます。
今後は少数の若い世代で、高齢者を支えなくてはなりません。
少子化・人口減少が進むと日本はどうなる?
少子高齢化に伴う労働人口の減少と高齢者の増加により、社会保障費の財源確保が重要な課題となります。
社会保障費とは、主に社会保険料と公費(税金)を財源にして、年金や医療費、介護福祉に使うための費用です。
2022年度だと131.1兆円の予算が組まれており、保険料が約6割、公費が約4割の割合で構成されています。
すでに社会保障の費用は増え続けており、税金や借金に頼る割合が大きくなっているのが現状です。
社会保険の公費負担の割合が高くなる
前述の通り、社会保障費は社会保険料と公費を財源にしていますが、厚生労働省の予測だと将来的に公費負担の割合が大きくなるとしています。
なぜなら、社会保険料は年金制度の改正により保険料に上限が設定されているのに対し、公費負担の上限は設けられていないからです。
そのため、後期高齢者の増加により医療や介護の公費負担が増えると見込まれています。
若い世代にとって救いのない話ですね…
また、2040年には人口減少に伴う世帯数の変動により、今の財源調達方法だと1割ほど税収や社会保険料収入が減少すると言われています。(参考:人口減少が及ぼす社会保障財源への影響)
つまり、2040年時点の労働世代は社会保険や税金の負担増を回避できません。
もう一度言います。
少子高齢化・人口減少社会で社会保障費の財源となる社会保険や税金を減らすことは不可能です。
貴重な労働力が医療・福祉に吸い取られる
これだけ一般歳出で高齢化に伴う関係費が充てられるということは、貴重な労働力が医療・福祉に吸い取られることも容易に想像がつきますよね。
実際、医療・福祉の就業者数の推移を見ていると右肩上がりです。
出典:令和2年版 厚生労働白書
推計値だと、2040(令和22)年には1,070万人(就業者総数の18~20%)が医療・福祉職に就くと見込まれています。
貴重な労働力が医療・福祉に吸い取られるため、慢性的な人手不足に陥る可能性があります。
国民負担は増加中だが世界基準だと低い
「これ以上国民負担が上がるのは勘弁してくれ」が庶民の本音ですが、世界基準と比較すると国民負担の割合が大きすぎるわけではありません。
ただし、他の国は高齢者以外の施策へも社会保障費を振り分けています。
このことから、日本の労働世代が報われないと感じる理由は、社会保障費の多くが高齢者向けの施策に使われているからと言えます。
世界の社会保障費と比較して、今の日本の立ち位置を確認しましょう。
- 高齢者中心だが給付規模は大きくない
- 国民負担率はOECD平均を下回る
- 日本の社会保障費は急増
社会保障費削減・減税は期待できないことがわかると思います。
高齢者中心の社会保障だが給付規模は大きくない
日本の社会保障は高齢者中心であるものの、決して給付規模は大きくありません。
社会保障費の政策分野別に対GDP比で国際比較すると、高齢者向けに偏っており、家族サポートや労働市場政策といった若年世代の支出はかなり低い状況です。
出典:令和2年版 厚生労働白書
社会保障の給付規模で諸外国と比較しましょう。
出典:令和2年版 厚生労働白書
日本の場合、高齢化率の伸びに併せて給付規模も右肩上がりです。
ただし、対GDPと高齢化率の比で見ると諸外国よりも抑えていることがわかります。
てか、フランスってスウェーデンよりも福祉大国だったのは意外でした。
国民負担率はOECD平均を下回る
2017年と少し古いデータになりますが、日本の国民負担率(社会保障負担と租税負担の合計額の国民所得比)はOECD平均を下回っています。
出典:令和2年版 厚生労働白書
日本は43.3%で、OECD加盟35か国中27番目です。OECD平均の50.5%を下回る水準になっています。
日本よりも国民負担率の低い国を挙げると、オーストラリアや韓国、スイスなどです。アメリカは言わずもがなですね。
イギリスやラトビア、イスラエルといった国々よりも日本の国民負担率は低いんですよね。
日本で見ると社会保障費の急増は明らか
社会保障費を対GDP比で諸外国と比較すると日本は決して大きくないものの、高齢化に伴う社会保障費の急増は明らかです。
社会保障費の項目別推移(%)を見ていきましょう。
平成12年度を基準(100)とした場合の推移グラフです。
文教及び科学振興費や公共事業関係費は100%を切っているなかで、社会保障関係費の伸びがすごいですね。
社会保障費のうち介護費や医療費が増加していることから、高齢化の影響は大きいことがわかります。
社会保障費・税金負担が増す可能性高し!
将来的に社会保障費・税金負担が大きくなると思っておいた方が良いでしょう。特に、税金の負担が増す可能性は高いです。
すでに社会保障費に税金も組み込まれているため、財源を税から補填拡大する流れがあってもおかしくありません。
令和4年度予算 国の一般歳出における社会保障関係費について見ていきましょう。一般歳出とは、国の予算から国債費や地方交付税交付金等を除いたものです。
<一般歳出において社会保障関係費の割合>
年度 | 一般歳出費(億円) | 社会保障関係費(億円) |
---|---|---|
2022 | 673,746(100%) | 362,735(約54%) |
2000 | 480,914(100%) | 167,666(約35%) |
高齢化に伴い、一般歳出に占める社会保障関係費が急増したため、20年前と比べると約1.5倍に拡大しています。
単純に社会消費関係費のみで比較すれば約2倍です…。
ちなみに、社会保障費の内訳を見てみると年金45%・医療30%、介護を含む福祉が24%です。
今後は社会保険料の値上げも考えられるし、増税も十分考えられるというか…避けられない状況にあると言っても過言ではありません。
税負担が重くなることに関し、国税庁のHPでは「支え合いと使い道を見極めることが大事」とフワッとしたことしか書かれていません。現状、解決策は無いに等しいと考えるのが妥当でしょう。
大増税時代を乗り越えるために必要なこととは
今後、若い世代が大増税時代を乗り越えるには、貯蓄と長期目線での投資の併用が必要になるでしょう。
長期目線での投資の場合、少ないリスクで元本(お金)を増やせる可能性があるからです。
サラリーマンであれば今後、税金や社会保障負担の割合が大きくなることが予測されます。
増税の負担を軽くするには、経済成長に伴う賃金上昇といった事象が必要です。そのためには、しっかりお金を循環させなくてはなりません。
しかし、若い世代ほど将来のことを考えて、財布の紐をしめることは想像するに難くないです。
また、2023年の世界経済の見通しは決して明るくありません。世界銀行のプレスリリースによると、先進国の95%、新興市場国と発展途上国のほぼ70%で下方修正されています。
昨年から投資を開始した人は、今年はマイナスになる可能性が高いです。すでにマイナスになっている人もいるかもしれませn。
しかし、庶民が少しでもお金を減らさずに生きていくためには、世界経済の発展にベット(賭け)して積み立てていくしかありません。
証券口座がマイナスになっても長期目線で新NISAを淡々と積み立てていくことが、庶民にとって大増税時代を乗り切る一つの方法だと思います。